レイラ・ザーナは、1980年代末から90年代初頭にかけて、トルコ政界に彗星のごとく登場し、クルド民族の若きヒロインとなった人物です。1991年、トルコ大国民議会(国会)選挙に同国東部クルド人居住地域から立候補し、30歳という若さでの当選。クルド人初の女性議員となった。しかし、議員就任式での議員宣誓を母語(クルド語)を交えて行ったこと、民族色を身にまとったことに端を発し、反レイラ・キャンペーン/反クルド人・キャンペーンが大々的に展開され、1994年に投獄された。分離主義テロリストとして死刑を求刑されるが、欧州諸国の圧力で禁固15年の判決に。そして2004年6月、欧州人権法廷による裁判のやり直しを命ずる裁定に基づき、ようやく釈放され、再審理が始まっています。
一方、レイラは、獄中にある間、サハロフ賞をはじめとするさまざまな国際平和賞を受賞しています(ローザ賞、アーヘン・アールタナティヴ賞、ラフト人権賞、ブルーノ・クライスキー賞ほか)。ノーベル平和賞にノミネートされたこともあります。
レイラ・ザーナはテロリストなのか、それとも民主化の旗手なのか。レイラ・ザーナは何を主張しているのか。クルド人は何をトルコ政府の要求しているのか。トルコ政府はいかなる論理でレイラ・ザーナを死刑にしようとしたのか。レイラ・ザーナはいかなる人生を歩んできたのか。本書は、レイラ・ザーナ投獄事件の全容を複眼的、立体的に見つめ、検証し、クルド人問題の本質を探ります。